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ゲームに学ぶ、従業員のやる気の引き出し方! HR×ゲーミフィケーション②エンゲージメント編

当記事では、HR×ゲーミフィケーションの無限大の可能性を考える ①採用編の続編として、従業員のエンゲージメントのための取り組みを、ゲーミフィケーションを活用してより良いものにする方法を考えていきます。



エンゲージメント向上:人事戦略の核心

人事管理における従業員のエンゲージメントの重要性は議論の余地はないでしょう。従業員が1名退職することは、業務はもちろんのこと、メンバーへのネガティブな影響は決して小さくありません。

一方で、従業員のエンゲージメントが高まることで、より一層の熱意をもって仕事に取り組むことになり、顕著な成果を上げる可能性が高まります。それに留まらず、従業員は自発的に新たな取り組みを始め、企業のイノベーションを推進する原動力となるかもしれません。


しかし、エンゲージメントを具体的にどのように高めるかは、明確な答えを見つけることが難しく、多くの企業にとって普遍的な人事課題なのではないでしょうか。


やりがいのある仕事、快適な職場環境などは確かに重要ですが、それらを実現する具体的な手段は一概には言えません。特に、全ての仕事が常にやりがいに満ちているわけではない現実を考えると、この課題はさらに複雑です。

ここでゲーミフィケーションの考え方が役立つかもしれません。ゲーミフィケーションは、仕事のやりがいを高め、職場環境を向上させる新たなアプローチとして、エンゲージメント向上の可能性を秘めています。本稿では、仕事のやりがいと職場環境の両方から、ゲーミフィケーションがどのようにエンゲージメントを向上させるかを探求します。


信賞必罰≠ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションを通じて仕事のやりがいを高めるアプローチは、受け入れる人もいれば、懐疑的な見方をする人もいるでしょう。

このようなアプローチに対し、多くの人が思い浮かべるのは、ソーシャルゲームでみるようなバッジやランキング、ポイントシステムの導入などではないでしょうか。たしかに、このような表面的なメカニズムだけでは、ホワイトボードに成績が貼られるバリバリ系の営業部を彷彿させます。

仕事のやりがい×ゲーミフィケーションの古典的イメージ


確かに目標と報酬のサイクル設計はゲーミフィケーションの王道ですが、ゲーミフィケーションはそれだけではありません。目標と報酬の設計は既存の人事制度に任せるとして、ここでは異なる角度からゲーミフィケーションの活用を考えることにします。

まず、ゲームデザインの原則を仕事の文脈に応用することを考えてみましょう。ゲームでは、プレイヤーをどのようにしてすぐに夢中にさせるかが重要です。このためには、「チュートリアル」や「初心者優遇」の仕掛けが効果的に用いられます。


イマドキの「チュートリアル」デザインを取り入れる

ゲームのチュートリアルでは、ゲームプレイを通じて操作を自然に学べる「インゲームチュートリアル」が一般的です。基本操作を一つずつ導入しながら、プレイヤーをゲームの世界に没入させ、小さな成功体験を積み重ねていきます。

このアプローチは、企業のオンボーディングプロセスにも応用可能ではないでしょうか?オンジョブトレーニングもよいですが、より短期スパンでのオンボーディングプロセスとして、体験型の研修をより増やすことは効果的そうです。その際には、企業文化や組織文化を体感させたり、小さな成功体験を与えることが重要です。

このよい事例として、ザッポス社の新人トレーニングがあげられます。ザッポス社はカルチャーフィットを非常に重視しており、新入社員に対しては一律で4週間トレーニングが行われています。ここでは様々なトレーニングを通して、業務内容を覚えるだけでなく(むしろそれ以上に)コアバリューについて体感・理解させることを重視しています。なんと、この4週間で企業カルチャーにフィットしないと感じた場合は、退職金として4,000ドルを支給するそうです。

ゲーミフィケーション×研修の事例では、Deloitteによる新人研修ゲーム「The Chosen Analyst」も有名です。ゾンビアポカリプスの世界観のなか、治療法を見つけて人類を救うことを目指します。自分のペースで、基本的なコンサルティングスキルに関するトレーニングができるプログラムです。

実際、2019年に行われたある調査では、ゲーミフィケーションを使ってトレーニングを行っている従業員の 83% が、より高いモチベーションを感じたそうです。


「初心者優遇」で新入社員のやる気をアップ


初心者優遇のアプローチでは、ゲームの初期段階でレベルアップが容易であったり、ゲーム内アイテムを豊富に提供することで、新規プレイヤーのエンゲージメントを高めます。RPGの序盤でどんどんレベルアップできる経験や、ソーシャルゲームでインストールした直後にどんどんガチャを回せる経験をした人は多いのではないでしょうか。

企業においても、新入社員が初期段階で大きな達成感を味わいやすくすることは、長期的なエンゲージメントと低い退職率に直結します。Jobvite の 2018 年の調査によると、28%の新入社員が、入社から90日以内に離職するそうです。この事実は、入社の初期段階にエンゲージメントを高めることがいかに大切かを物語っています。

新しいメンバーが即戦力として求められる状況では、慣れない環境での挑戦は避けられません。しかし、このプロセスを通じての心理的負担を最小限に抑えることが、高いエンゲージメントの維持には不可欠です。ここで、新入社員が段階的にかつ頻繁に大きな達成感を味わえる機会を提供することは、効果的なエンゲージメント戦略と言えるでしょう。

これを実現するための具体的な施策を考える上では、従業員エンゲージメントに関するアメリカの老舗大手、O.C.TANNER社によるブログ記事が参考になります。この記事では、チームへの歓迎のためのブランド品などを使って歓迎の意を示すこと、定期的な個別面談やチームランチでカジュアルな称賛・表彰を行うこと、早期から目標設定をさせることなどが推奨されています。

上司が定期的に自分の功績を認めてくれるという従業員は、定着率が5倍高いというデータも紹介されており、入社初期におけるエンゲージメント施策の重要性がわかります。オンボーディング施策を検討する上でご参考になれば嬉しいです。


まとめ

本記事では、HR×ゲーミフィケーションを用いた従業員のエンゲージメント向上策について考察しました。ゲーミフィケーションは、目標と報酬のサイクル設計に留まらず、ゲームデザインの原則を仕事の文脈に応用することで、従業員のエンゲージメントを高めることができます。

「チュートリアル」や「初心者優遇」の仕掛けを通じて、新入社員がより一層の熱意をもって仕事に取り組み、自発的に新たな取り組みを始めることで、企業のイノベーションを推進する可能性が高まります。

もちろん、エンゲージメント向上に使えるゲーミフィケーションの施策は、上記だけではありません。人の心を動かすゲームデザインのノウハウは、多岐に及びます。「ゲーミフィケーション×HR」のより深い探求に興味のある人事担当者の方はぜひ、セガ エックスディーに気軽にご連絡ください!



執筆:野尻 昌仁|株式会社セガ エックスディー

 コンサルティング業界で新規事業開発・ジョイントベンチャーの立ち上げなどを経験。現在はセガ エックスディーでプロデューサーとして、社会課題を解決するスマートフォンアプリやカードゲームを製作。

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HR×ゲーミフィケーションの無限大の可能性を考える ①採用編



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