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HR×ゲーミフィケーションの無限大の可能性を考える ①採用編


私たちが日々働く会社組織において、人々のエンゲージメントや成長を支えるHR(Human Resources)の役割は計り知れません。

しかしHRは、「人」を相手にする仕事であるゆえに、決まった答えがなく、複雑で難解な分野であると言えます。我々セガ エックスディーのHRチームも、日々悩みながら仕事をしています。

そんなHR領域において、同じく「人」を相手にエンタテインメントを提供するゲーム分野のナレッジには、大いに参考になる部分があるように思います。

当記事では、HR領域×ゲーミフィケーションの可能性について、「採用」「エンゲージメント」「リスキリング」の3つの観点から探っていきたいと思います。



■ HRにおける3つの課題とゲーミフィケーション


採用

適切な人材を見つけ、引き寄せ、そして採用することは非常に重要です。市場には数えきれないほどの才能があふれていますが、それぞれの企業にとってピッタリの人材を見つけ出すのは、一筋縄ではいきません。

採用において給与や休暇日数などの待遇面は重要である一方、こうした条件は簡単に向上できるものではないため、情緒的な価値においていかに求職者にアピールするかが重要になっています。

「この会社で働いたら楽しそう」だと思ってもらうために、ゲーミフィケーションをいかに活用できるかについて、具体例を交えながら、この後詳細に考察したいと思います。


エンゲージメント

採用と同様に、自社の業務についてよく理解した従業員を企業に留まらせることも重要です。「リテンション」、つまり従業員が企業に留まること、そして「エンゲージメント」、従業員が仕事に情熱を注いでいる状態。これらは企業の競争力に直結しています。

リテンションとエンゲージメントのために、ゲーミフィケーションには何が出来るでしょうか。ソーシャルゲームみたいに、バッジなどの称号やランキングを与える?ポイントシステムを導入する……?
なんというか、昭和体質でブラックな営業系企業みたいでイヤですよね……

今後の記事では、エンゲージメントにおけるゲーミフィケーション活用について、ゲーミフィケーションの幅の広さを理解していただくためにも、上記とは少し違う角度から検討してみたいと思います。


リスキリング

さて、次に「社員の学習と成長」に目を向けてみましょう。政府がリスキリングなどの「人への投資」に「5年で1兆円」を投入する方針を発表するなど、特に最近の日本では非常に重要視されているテーマです。

一方、日本は諸外国と比べると、自己啓発やスキルアップに時間を割く「学び続ける文化」が根付いていないとよく言われます。これは、日本の企業が変化する市場環境に迅速に適応し、イノベーションを生み出す上で大きな障壁となり得ます。

「教育」はゲーミフィケーションの特に得意分野です。『Duolingo』に代表されるような学習サービスへの導入は定番ですが、組織として取り組める施策については、今後の記事で考えていきましょう。


■ 拡大するゲーミフィケーション市場とその定義


先に、「ゲーミフィケーション」という言葉について触れてみたいと思います。実は近年、世界的に非常に注目度があがり、成長市場である「ゲーミフィケーション」ですが、その定義さえまだまだ曖昧で、そのノウハウも一般的には普及していません。

https://www.precedenceresearch.com/gamification-market

ゲーミフィケーションとは、簡単に言えば、ゲームデザインにおける原理や要素を、ゲーム以外の分野に応用することを指します。これによって、人々のモチベーションを引き出し、彼らの行動をポジティブな方向に導くことできます。

「バッジ」や「ポイント」などの表面的なゲームデザインをただ踏襲するのではなく、古今東西のゲームの「面白さ」の背景にある、あらゆるノウハウ・暗黙知を応用することが、総合的なCX(顧客体験)を前提とした、本質的なゲーミフィケーションの活用です。

私たちセガ エックスディーは、このゲーミフィケーションを強みとしていて、企業が直面する様々な課題を解決するお手伝いをしています。

「ゲームと仕事って全然違うんじゃないの?」と思われるかもしれません。確かに、一見すると大きな違いがあります。しかし、人間の心理や動機付けに関して言えば、意外と共通点が多くみられます。

ゲームは、プレイヤーが夢中になり、時には困難を乗り越えてでも目標を達成しようと努力するように作られています。これって、仕事においても求められる姿勢と似ていますよね。

だからこそ、ゲーミフィケーションは、人々を効果的に動かし、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるように支援するための強力なツールとなり得るんです。


■ Googleの採用におけるゲーミフィケーション活用事例


採用におけるゲーミフィケーションを考えるにあたって、
「Google Foobar Challenge」は非常に含蓄に富む事例です。

「Google Foobar Challenge」は、コンピューター関連の検索ワードを入力したユーザーに対してランダムに、謎のメッセージと共にプログラミングの問題が提示されるというものです。

この問題を解くと、更に難しい問題が出される仕組みになっていて、最終的にはGoogleの採用チームから直接連絡が来るというものでした。

この事例は、採用プロセスにゲームの要素を取り入れることで、優秀な人材を引き寄せ、同時に彼らのスキルをテストするという一石二鳥の効果を生み出したわけですが、そのプロセスには数多のゲーミフィケーション的工夫がみてとれます。

point1:突然の「天命」が人を惹きこむ

Foobar Challengeが秀逸である理由のひとつは、挑戦者がランダムに選ばれるということです。それも、ただランダムなだけでなく、専門性の高い検索をしているところで、突然提示されるという点でよくできています。

まるで、『デジモンアドベンチャー』の主人公である子供たちや、『マトリックス』のネオのように、突如として「選ばれし者」になる体験。

ここには「ヒーローズジャーニー」と呼ばれる、物語の中で主人公が冒険を経て成長していく過程を描いたモデルにおける、最初のステップ「天命」との対応関係が見出せます。RPGのシナリオデザインにおいても、非常に重要とされるノウハウです。

1:Calling「天命」
2:Commitment「旅の始まり」 
3:Threshold「境界線」
4:Guardians「メンター」 
5:Demon「悪魔」
6:Transformation「変容」 
7:Complete the task「課題完了」 
8:Return home「故郷へ帰る」 

point2:「世界観」の存在が遊びへと誘う

Foobar Challengeはただのプログラミングクイズではなく、世界観とストーリーが用意されています。

ウサギ(Bunny)の惑星を破壊しようとする悪の組織が敵役として提示され、チャレンジャーは計画を阻止しながら宇宙船のウサギちゃんたちを救出していくことになります。「ドアロックを解除する」など世界観にあった形でプログラミングの問題が提示されていくのです。

このようにストーリーや世界観を提示する行為には、ユーザーのスタンスを「遊び」に変える効果があります。冷静に考えて、調べ物をしていたのに逆にクイズを出されるという経験は、それほど快適なものではありません。

そこで、「可哀想なウサギちゃんを助けるゲームなんです」という提示をすることによって、ユーザーを「いっちょ付き合ってやるか」という気持ちにさせるわけです。


ちなみに、ゲームデザインにおいてユーザーの没入度を上げる仕掛けのことを「ラビットホール」と呼んだりします。

語源は『不思議の国のアリス』のウサギの巣穴ですが、Foobar Challengeでウサギが題材にされているのも、もしかするとこれを意識しているのかもしれませんね。

AAで可愛いウサギのイラストも登場します。


point3:成長体験をデザインし夢中にさせる


ゲームがユーザーを夢中にさせる、もっとも強力なメカニクスはこの「成長体験」のデザインかもしれません。

RPGにおけるレベルアップ、ステージクリア。マルチプレイゲームにおけるランク昇格、上達の実感。大中小の成長実感や達成感をプレイサイクルの中に組み込むのが、ゲームデザインの基本です。

Foobar Challengeでも、ステージを5つに分け、徐々にレベルアップしていく設計になっています。さすがにゲームとして作りこまれているわけではないので、細かい成長ステップは用意されていないものの、これだけでも十分楽しい体験と言えるでしょう。

成長実感をユーザーに与えることは、ゲームにおいてとても重要であるため、ゲーミフィケーションの手法としても有名なものがたくさんあります。バッヂ、ランキング、ポイント、プログレスバーなどはゲーミフィケーションの最定番手法ですが、これらはすべてこの成長の感覚を与えることが本質的な目的であると言えるでしょう。

逆にいえば、この目的を踏まえずに表面的にバッジやランキングを採用してもあまり意味がありません。例えば、まさに今ご覧いただいているプラットフォーム「note」では、執筆者に対してバッジを付与する機能があります。

自分の書いた記事が一定数スキされたときなどに付与され、これは嬉しい体験です。しかし、例えばnoteが私が誤字・脱字を修正した数を記録し、「誤字1000回記念」のバッジを付与したとしても、それは逆効果にしかなりません。バッジやランキングなどのツールは、ユーザーの成長実感のために活用したいものです。


■ もっとお気軽にゲーミフィケーションを導入!


「Google Foobar Challenge」は非常に面白い取り組みですが、自社で模倣しようとすると、多くの企業にとっては難易度が高いと考えられます。プログラミングのようにわかりやすい課題が出せる業種は限られていますし、コンテンツ自体を用意するのも大変です。

そんな場合は、採用に「謎解きゲーム」を活用してみるのはいかがでしょうか?超人気テレビ番組の『東大王』などのテレビ番組や、日本中で大人気の『リアル脱出ゲーム』などのリアルイベントなど、謎解きを中心にしたコンテンツは年々人気を増し、誰もが楽しめる一大ジャンルになっています。

謎解きであれば多くの人が楽しんで参加することができますし、問題の難易度をコントロールして頭の回転が早く知的好奇心のある求職者にアプローチしたり、問題の設計次第では特定の専門知識をもつ求職者だけが解ける問題をつくることも可能です。

セガ エックスディーは、株式会社DINAMICAの提供するバーチャルオフィスツアー生成アプリ「Tours(ツアーズ)」の「ナゾ解きオプション機能」を活用した謎解きコンテンツの制作・提供を行っています。


謎解きの問題は、お客様のご要望にあわせて柔軟に作成可能です。謎解きマニアをも唸らせる解きごたえのある問題、専門知識を用いないと解けない採用選考にぴったりの問題、謎解きを遊びながら自社について知ってもらえるような問題など、目的に合わせた問題設計が実施可能です。


株式会社DINAMICA プレスリリースより

謎を解くために自社HPを見させるパターンの例。街歩き型謎解きに近い構造ですね。もちろん、合同説明会などのリアルイベントに謎解きを組み込むことも可能ですし、何か他のエンタテインメントに採用を組み合わせることも当社の得意分野です。

採用人事にゲーミフィケーションを導入したい!というご担当の方は、ぜひ一度意見交換から始められたらと思いますので、記事末尾の連絡先やSNSアカウントにお気軽にメッセージを送信ください!

最後は宣伝になってしまいましたが、HR×ゲーミフィケーションの可能性について、感じていただくことはできたでしょうか。

次回の記事では、社員のエンゲージメントにゲーミフィケーションを組み合わせる方法について考えていきたいと思います!よろしければセガ エックスディーのnoteをフォローいただき、記事の更新をお待ちください!



執筆:野尻 昌仁|株式会社セガ エックスディー

コンサルティングファームでの新規事業立ち上げ・ジョイントベンチャー設立などを経て、2021年にセガ エックスディーに入社。コンサルティングスキル・事業開発スキル・ゲーミフィケーションの知見を組み合わせ、様々なクライアントと新たな価値を共創している。

また、社内でweb3領域の取り組みを推進しており、自身も様々なNFTのコレクターであるだけでなく、Total Volumeが300ETHにおよぶ国内大型NFTプロジェクトの運営にも参画している。

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第一回:『目標を明確にし、「進捗感」を与える』編
第二回:『目標へのモチベーションを高める「世界観」と「希少性」』編
第三回:『目標までの過程が楽しくなる「初心者設計」と「創造性」』編


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