拍手と歓声を生んだ『楽しく学べるゲーム体験型防災訓練』とは。
皆さんは「防災訓練」と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。様々な自然災害が発生しやすい日本において、「防災訓練」は「いざ!」という時の備えとして大変重要な取り組みであり、誰しもその重要性について理解していると思いますが、学校や町内会などで行われる防災訓練では「参加しなくてはいけないから参加した」という人も多いのではないでしょうか。
我々セガ エックスディーは、もっと能動的に意欲的に防災訓練に参加できたなら、より学びのある効果的な「防災訓練」が実現できるのではと考え、セガで培った「ゲーミフィケーション」を用いて「楽しく学べるゲーム体験型防災訓練」を企画し実施してきました。
今回募集定員を超えて多くの申込があった上に、全員が参加するという驚異の歩留まり100%という状態でスタートを切り、参加者の高い期待を持って『楽しく学べる防災訓練』は始まりました。
拍手も笑顔も起きた『防災訓練』とは!?
ゲーミフィケーションを活用した『楽しく学べる防災訓練』について、防災訓練当日の時系列を追いながらどのような防災訓練だったのか、皆さんにご紹介できればと思います。
■ 産官学による、「楽しく学べるゲーム体験型防災訓練」の概要について
2023年3月21日、神奈川県総合防災センター という地震や風水害などの災害体験ができる「防災情報・体験フロア」や防災に関わるイベントや講座などが催される施設で、今回の産官学による、楽しく学べるゲーム体験型防災訓練が実施されました。
実際に体験し、感じたことをお伝えする前に、簡単に取り組み概要を記載させていただきます。
<実施概要>
・目的 :本防災講座によって、地域防災の中心が中高年者になっている状況から、若年世代にも防災への強い意識を持ってもらい、災害発生時は皆が主役になって活躍し、神奈川県が防災に強い地域になることを目指す。
・日時 :2023年3月21日(火曜日・祝日)
午後1時から午後4時
・場所 :神奈川県総合防災センター (住所:厚木市下津古久280)
・講座概要:官(神奈川県総合防災センター)にある素材を舞台に、産(株式会社セガ エックスディー)の企画・演出・進行による、楽しく学べる体験型の新しいタイプの防災訓練を実施。防災訓練で出されるミッションに関わる防災知識も、学(法政大学講師)からしっかりと学びます。
・講師 :
<企画・演出・進行>
伊藤 真人|株式会社セガ エックスディー 取締役 執行役員 COO HCD-Net認定 人間中心設計専門家
株式会社セガにゲームプランナーとして入社し複数タイトルのモバイルゲームディレクターを担当。新規事業部門に異動後は、新規事業を立ち上げディレクター/アライアンスを担い、総ユーザー数1億超を達成。その後新規事業責任者としてメディア/ポイントプラットフォーム/コミュニティサービス等の幅広いITサービスの事業創出を実施。ゲーミフィケーションによる企業課題・社会課題の解決を目指し2016年8月に同社を設立し、取締役として事業領域を管掌。
<防災知識の習得・指導>
正谷 絵美|法政大学兼任講師・防災士
大学では災害支援論を学生に指導する傍ら、防災士として、国内外で防災啓発活動・被災地(北海道や熊本など)支援、メディアにも多数出演。
■ 防災における「自助・共助・公助」について
それでは時系列でみていきましょう。
最初は大会議室に参加者があつまり、神奈川県総合防災センター 中村所長から冒頭の挨拶をいただき講座がスタート!
その後、防災における「自助・共助・公助」についての講義を法政大学兼任講師で防災士の正谷 絵美先生からお話をいただきました。
正谷先生の災害における「自助・共助・公助」についての講義は、豊富な知識や経験を通じた熱のこもった講義で、決して他人事ではなく、誰もが今後経験しうることであり、参加者も真剣に耳を傾けていました。
この後はいよいよ『楽しく学べるゲーム体験型防災訓練』の開始です。
■『楽しく学べるゲーム体験型防災訓練』概要
司会進行は当社取締役 執行役員 COO でありゲーミフィケーションデザイナーでもある伊藤が担当しました。
企画の内容はこうです。
<ストーリー>
・未確認隕石が突如確認され、特別警戒警報の通達が日本政府より行われる
・隕石が神奈川県内に落下する可能性が非常に高い
・衝突予想時刻まで1時間強と予想。全住民の早急な避難が要請される
・正谷先生から教わった「自助」「共助」「公助」の考え方をふまえて避難することがカギ
・時間内にシェルター(避難所)へ全員が避難し、最後に隕石衝突の爆風を防ぐためにシェルターの扉を閉められれば避難成功
※あくまでゲーム上の設定になります。
参加者は8グループに分かれ、下記の避難の手引きをもとに、施設内の各エリア(地震体験エリア・風水害エリア・火災エリア・AEDエリア・煙エリア・通報エリア)を回り体験を終えると、それぞれクイズが出題され、クイズから導き出された数字を集めてシェルターの扉の鍵を開けて中に入ることができる、という設定です。
そして、シェルターではチーム内で協力しあいながらシェルター内の設備の設営(簡易パーテーション・簡易トイレ・簡易ベッド等の組み立て)をしてもらいます。
そして、最後シェルターの扉を閉める数字をチームの垣根を越えて参加者全員で導き出して正解すれば、晴れてシェルターの扉を閉めることができ、隕石による爆風の被害から身を守ることができる。
というストーリーと企画の流れになります。
■ 体験エリアパート
それではミッション開始!
グループ毎に案内を受けて大会議室を後にし、いざ!各体験エリアへ!
エリアは全部で6つ。
・地震体験エリア
・風水害エリア
・火災エリア
・AEDエリア
・煙エリア
・通報エリア
全て体験して、エリア毎のスタッフからクイズを出題してもらい数字を導き出せ!
<地震エリア>
モニターを前にして震度上昇に伴い徐々に上下左右と大きく揺れていきます!
時折悲鳴が聞こえることも・・・!
おびえる子もいれば喜ぶ子もいました。(大人の方が腰が引けてる?)
<風水害エリア>
写真は見づらいですが、扉の向こうでは、徐々に強風が吹き荒れています。
みんな飛ばされないように必死に手すりにしがみついています!
<火災エリア>
家の中で火事が発生!正しい手順で急いで火を消せ!
ちゃんと消火器を火元に向けられないと失敗することも・・・。
<AEDエリア>
人形に対してAEDをつかった心肺蘇生。
みんな初めての経験で最初は戸惑いながらも教わりながら手順を学んでいます。
(うまくできるかな。)
<煙エリア>
煙が充満する迷路のような沢山の小部屋と扉だけの部屋を素早く進み、安全な場所へたどり着け!
壁に手を付けながら腰を低くして進む様は、外からモニターで垣間見ることもできます。
<通報エリア>
専用電話機を使って素早く的確にオペレーターに状況を伝える体験エリア。
うまく伝えられるかな?
クイズは、体験エリアに関するクイズが出題されますが、その中でいくつかをご紹介します。
<地震エリアの出題>
Q:赤に入る数字はなんでしょう?
わかりますか?
ヒントは、「地震」(と言えば・・・!?)
<風水害エリアの出題>
Q:青に入る数字はなんでしょう?
わかりますか?
ヒントは、「雨」「1年」
それぞれのエリアから出題されるクイズに正解すると数字が集まります。
集まった数字を正しい順番で並べることができれば、シェルターに避難する事が出来る。
大人も子供も頭をひねりながらなんとか全員が答えにたどり着きました。
様子を見ていると、大人の方が一つことにとらわれ、白旗を上げる傾向にありましたが、小学生から大学生までの若い方が粘り強く、ある時パッと正解にたどり着いているようでした。面白いですね。
■ シェルター内の設備の設営パート
なんとかたどり着いたシェルターで待ち受けるのは、実際の避難所などで使われる簡易パーテーションや簡易トイレ・簡易ベッドなどをチームで協力して行う組み立て作業です。
年齢に関係なく、大人も子供助け合いながら、声を掛け合いながら運んで組み立てます。
ここでも大切なのは、「自助」「共助」「公助」の精神。
手を取り合いながら、声を掛け合いながら進めないと、とてもじゃないけど組み立てることはできません。
あっという間に各チームでパーテーションが組みあがりました。
こうしてみると壮観ですね。
チームは知人だけで構成されていません。今日初めて会った人と、共に助け合いながら組み立てられました。
実は運営側で一つ仕掛けをいれさせてもらいました。
それはわざと簡易トイレパーツの一部を他のチームに紛れさせていることです。
実に『ゲーミフィケーション』らしい仕掛けなのですが、通常UIやUXを考える時、いかにスムースに最短で答えにたどり着くか、という利便性を突き詰めるのが一般的な体験設計かと思いますが、そこをあえて「手間」を加えます。「負荷」と言い換えてもいいでしょう。
運営側からは、事前に何もその事について参加者に伝えていません。
しかし、「自助・共助・公助」を学び、クイズでチームが一つになった彼らは、自発的に他のチームなどに声掛けをして「トイレパーツ余ってませんかー!」「こっちにトイレパーツ余ってます!」と促す人などが出てきて、自然発生的に「共助」関係が生まれ、もうそこには他人事で我関せず、なんていう人は一人もいない状況が生まれていました。
■ミッションをクリアへと導いた「自助・共助・公助」
最後の大仕事。
シェルター内の設備の設営も各チームで完了し、隕石衝突の時間も迫る中、隕石衝突による爆風を防ぐために、シェルターの扉を閉めなければなりません。
そこで必要になるのが扉を閉めるための暗証番号。
シェルターに入るときに、全チーム答えの数字は導き出しています。
その数字を使って、シェルターの扉を閉める数字を導き出す事が最後のミッションです。
この最後のミッションを言い渡されると、各チームが年齢を問わず真剣に議論が交わされ始めました。
皆さんは答えにたどり着けるでしょうか。
そこで伊藤からヒントが出されました。
『全員で力を合わせる(共助)こと』
すると誰かが言いました「全チーム集まろう!」
その時生まれた目の前の光景は、運営側である我々の想定を超えた光景でした。
参加者は、徐々に一か所に集まり、年齢を問わず議論が始まります。
ここだけの話ですが、この光景に少し感動しました。笑
そして出てきた答えを伊藤に告げますが、なかなか正解が出ません。そうこうしているうちに、隕石衝突が迫るタイムリミットが近づいてきます。
タイムリミットが目前のその時、一人の男の子が・・・正解の番号を導き出します。
伊藤の「正解!」の言葉とともに、会場は大きな拍手と笑顔に包まれました。
隕石衝突による爆風の被害から、全員がシェルターに無事に避難し身を守ることに成功した瞬間です。
■ 大きな達成感につつまれた閉会
正谷先生、当社伊藤からそれぞれ総括をしたのち、シェルターにあるパーテーションやトイレ、ベッド等を全員で片付けして、防災講座はすべてのコンテンツを終えました。
写真の顔を見てもわかる通り、伊藤も正谷先生も満足感が漂ってますね。
今回の協力企業からはお土産を提供いただき、参加者全員に手渡されました。
参加者が帰られる際は、もう始まりの時の心の壁はありません。
小学生から年配まで年齢問わず大きな声で
「ありがとうございました!」
「楽しかったです!」
「お疲れさまでした!」
と口々に言ってくれました。
そして、それを見た神奈川県総合防災センターの皆さんや正谷先生やわたしたちも大きな達成感に包まれました。
■ おわりに
わたしは今回、スタッフとして参加しましたが、「ゲーミフィケーション」の可能性を強く感じる機会になりました。
適度な負荷はその後の達成感を生みます。
RPGゲームなどでは、面倒なレベル上げや細かなミッションをこなしてようやくボスと戦い、なんとかして勝つことができますが、恐らく何の苦労もなしにボスに勝ったところで達成感を感じることはできないでしょう。
「負荷」と「解放」
これはあらゆるゲームに多くある構造です。
今回参加者は「クイズ」という負荷や「他人と協力して組み立てる」という負荷を通じて隕石衝突から避難をして身を守るというミッションを達成したことで大きな満足感を得ることが出来たのだと思います。
その際に、ゲーミフィケーションの設計を「自助・共助・公助」を前提としたことで、身をもって体験を通じて学ぶことを提供することができたのだと思います。
今回、参加者皆さんが年齢問わず全員で積極的に助け合う様子を目の当たりにし、最後には大きな歓声や拍手、そして笑顔を見ることができ、狙い以上のリアクションが得られたことを心から嬉しく感じました。
セガ エックスディーは、今後も企業や社会における様々な課題に対して、「ゲーミフィケーション」を活用して解決していきます。
そして世の中がもっと楽しく幸せになる社会を目指していきます。
今回はその可能性を身をもって感じることが出来た素晴らしい機会でした。
執筆:金子 崇久|株式会社セガ エックスディー
マーケティング・コミュニケーション部部長。大手広告会社でデジタルを中心としたストラテジックプランニングを担当。その後セガでNoahPassのビジネスサイドの責任者を経て、デジタルコンテンツ企業でPRとイベント事業の責任者を担当。再びセガへ復帰し、現在はセガ エックスディーで広報・PR/マーケティングに従事。
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