世界的な社会課題を解決する可能性を秘めた『フードテック』とは?
こんにちは!セガ エックスディー プランナーの金谷です。
今回は、世界中の食に関する課題に対する打ち手として注目を集めている「フードテック」について解説したいと思います。
フードテック市場は世界的に急拡大しており、食品や飲食業界のみならず、家電メーカーや住宅設備メーカーといった異業種も注目するビジネストレンドとなっています。
■ フードテックが注目を集める背景
人口増加による食料需要の増大や、SDGsへの関心の高まりにより、世界における食に関する課題が顕在化してきました。また、経済発展に伴い消費者の生活水準が高まったことで食料需要の多様化も発生しています。日本でも健康志向や環境志向を売りにした商品を近年よく目にしますね。
こうした需要への対応や社会課題の解決が求められる中で、生産・加工・流通・消費といった食の各フェーズに対して様々なソリューションを提供できるフードテックが注目の的になっています。
■ 日本におけるフードテックの事例を紹介
日本では2020年10月に「フードテック官民協議会」が立ち上がり、フードテック推進活動が進められています。そんな日本におけるフードテック事例を、生産・加工・流通・消費の各フェーズごとにそれぞれ紹介します。
生産:人工光型植物工場(株式会社スプレッド)
育苗から収穫までの栽培工程を自動化した植物工場を運営しています。天候などの外的要因に左右されない生産体制を構築し、『どこでも、誰が扱ってもおいしく生産できるプラットフォーム』を実現しています。生産が安定化しているだけでなく、水の使用量や廃棄野菜が大幅に削減されているという点でも、地球にやさしい工場となっています。
加工:大豆を用いた植物肉(DAIZ株式会社)
増大するタンパク質需要への対応策として世界中で注目を集める「代替肉」が、日本でも開発されています。DAIZ社の特許技術である「落合式ハイプレッシャー法」を用いて大豆を発芽させ、特殊な機械により食感や風味を食肉に近づけた「ミラクルミート」を生産しています。「穀物」の大豆を発芽させて「植物」の大豆にすることで、うまみ物質として知られるグルタミン酸の量を約5.5倍にアップさせています。
流通:鮮度保持と環境負荷低減を両立する食品包装(TOPPAN株式会社)
食品を完全に密封・真空にできるとして世界中で採用されている「スキンパック」という包装方法があります。従来は発泡スチロールトレイが主流でしたが、TOPPAN社はこれまで培ってきた紙製パッケージの技術を活用し紙素材のトレイを開発。プラスチック使用量の削減を実現しました。また、紙素材のトレイには独自開発したバリアフィルムである「GL FILM」をラミネート。外気の水分・酸素から内容物を保護して鮮度を保つ機能も従来のトレイに比べ向上しています。
消費:塩味増強スプーン(キリンホールディングス株式会社)
食塩の過剰摂取は厚生労働省が『日本人の最も重要な栄養課題』と位置付けられています。その解決策として、微弱な電流を食品に流して塩味やうまみを増強するスプーンが開発されました。このスプーンを使うと薄味の食事でも塩味を感じることができ、減塩色を美味しく食べることが可能になります。
■ フードテックの効果を高める具体アイデア
フードテックは、大きな社会課題を解決する可能性を秘めています。しかし、どんなに優れた技術やサービスが生まれても、それを利用する人がいなければ効果は限定的になってしまいます。特に、植物肉や塩味増強スプーンのように一般消費者が直接触れるものは、いかに「使ってみたくなる」「生活に取り入れたくなる」ように動機付けするのが重要です。その動機付けの手法としての「ゲーミフィケーション」を紹介します。
「ついやりたくなる」人を動かす8つの属性
セガ エックスディーでは「ついやりたくなってしまう」8つの属性を定義しています。
今回は、フードテックと創造性を組み合わせたアイデアをご紹介します。
創造性
創造性は、自分の意思で選べる選択肢がある時に有能感を抱く属性です。
文化祭でクラスの催しを仲間と作り上げていく過程の楽しさや、トランプのゲームで相手の手札の予想が当たった喜びをイメージしてみてください。人間は特定の制限下において、自ら選択肢を選べることで有能感が高まります。ゲームUXでは「デッキ編成」「武器の組み合わせ」といった用いられ方をしています。
詳しくはこちらの記事も参照
フードテック×「制限選択肢」×「試行錯誤」
植物肉を用いたり、塩味増強スプーンを使って食べたりする料理の場合、参考となるレシピを予めユーザーに提供しておきます。自分でイチから考える必要をなくすことで、未知の食材や食器を使うことに対するユーザーの心理的ハードルを下げることができます。
一方で、そのレシピは完全に食材と分量が決まっているわけではなく、複数選択肢から選んで決められる項目を残しておきます(制限選択肢)。例えば塩味の感じ方には個人差があるので、食塩の量をいくつかのパターンから選ぶことができる、といった具合です。このような仕掛けを加えることにより、ユーザーの「より美味しくなる選択肢を選びたい」という欲求を刺激することができます。また、その結果「良い選択ができた」という達成感を感じさせたり、「他のパターンだともっと美味しくできるかもしれない」という試行錯誤の動機を付与することにもつながります。このようにして、「ゲーミフィケーション」を活用することによって、継続的にフードテックから生まれた商品・サービスに触れてもらうことが可能になるのではないでしょうか。
■ まとめ
いかがでしたでしょうか。フードテックは食に関する様々な場面で社会課題にアプローチすることができ、食糧不足といったスケールの大きな問題の解決策となる可能性も秘めています。
この可能性をさらに広げていくためには、企業と社会の相互理解が欠かせません。企業は適切に情報開示し、手に取りやすい商品を提供することで消費者の信頼を獲得する必要があります。反対に消費者は、食に対する意識を変化させ、未知の技術を理解しようと努める姿勢が求められるのではないでしょうか。
ゲーミフィケーションの活用は、こうした企業と社会の関係構築に対しても一助になれるのではと私は思います。
今後さらに市場が成長すると言われているフードテックに、これからも注目していきましょう。
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執筆:金谷 航|株式会社セガ エックスディー
2024年新卒2期生としてセガ エックスディーへ入社。人気アニメ映画のプロモーションキャンペーンや社内イベントの企画・制作に携わる。バスケ・野球などのスポーツ観戦が趣味。
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