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NFT界隈から学ぶコミュニティマネジメント『目標へのモチベーションを高める「世界観」と「希少性」』編

コミュニティマネジメントに注目が集まる昨今。
「ゲーミフィケーション」はコミュニティを盛り上げるために非常に強力なノウハウです。
そして、多くのNFTプロジェクトはすでにコミュニティマネジメントにゲーミフィケーション要素をたくさん導入しています。

このnoteでは、様々なNFTプロジェクトで実践されている、コミュマネで活かせるゲーミフィケーションノウハウを、三部構成でお届けします。

第一回:『目標を明確にし、「進捗感」を与える』編
第二回:『目標へのモチベーションを高める「世界観」と「希少性」』編 
第三回:『目標までの過程が楽しくなる「初心者設計」と「創造性」』編 

前回のnoteでは、王道である「目標と進捗」のノウハウについて学びました。第二回である本記事では、コミュニティ参加者のモチベーションをより向上させるための方策について見ていきます。

目標へのモチベーションを高める「世界観」と「希少性」

世界観

NFTに限らず、アートというものは、ただ見た目が美しいから・好みだから購入されるわけではありません。ウォーホルの『32個のキャンベルのスープ缶』が評価されたのは、そのビジュアルがもつ芸術性ではなく現代アートとしての文脈故です。

コンテキスト・ビジョン・ブランドステートメント…など色々な言葉が思いつきますが、何しろユーザーが「これは自分事である」と感じられるような演出は、目標への動機を強めるうえで非常に大切です。弊社ではこの視点をよりゲームらしく「世界観」と表現することが多いです。

「世界観」の見た目に現れる部分はもちろん重要です。NFTでいえば先述の(27億円の値を付けた)BAYCというコレクションは、ストリートカルチャーを参照した最初のNFTでした。ほかの超高額コレクションでいえば、AzukiはAnime Culture、Cool Catsはサンリオ的なkawaii Cultureの世界観を引用しており、NFTの世界にはじめてそれを持ち込んだという意味で、それぞれのカルチャーのファンにとって強力な「自分事化」効果をもたらしたと言えます。

しかしコミュニティにとって必要な「世界観」はこのような見た目に限ったものではありません。プロジェクトの提示する「ストーリー」こそが世界観の肝であるとさえ言えます。

ストーリーというと、「あなたは伝説の勇者の生まれ変わり。聖剣エクスカリバーを抜いて世界を救えるのはあなただけです!」といったテレビゲームや小説のような物語を想像するかもしれませんが、コミュニティにおいて必要とされるストーリーは少し異なります。
プロジェクトが始まったきっかけ・運営者の想い・目指す未来・・・などといった、プロジェクト自体が紡いでいく物語が、コミュニティに必要なストーリーです。

NFTプロジェクトにおいても、「web3からネクストディズニーを生み出す(YugaLabs)」「日本のアニメーターの労働環境を改善するため、NFTを活用して新しい仕組みのアニメスタジオを作る(ANIM,JP)」など、参加者が共感し応援したくなるストーリーが、強固なコミュニティを生み出しています。

また必ずしも、上記例のように壮大な目標がある必要はありません。より等身大の個人が生み出す物語もまた、共感と支持を集めるストーリーになります。

NFTの事例では、『100日後に借金完済するぴぴぴ』の連載者ぴぴぴさんの物語がよい事例になると思います。美大で志した油絵の道で挫折し、社会人としても挫折を味わい、気づけば350万円の借金を負っていたぴぴぴさん。NFTの販売を通して借金を返済するまでをリアルタイムで描く四コマ漫画の連載は、彼女を応援するコミュニティを徐々に広げ、最終的には一点物のアートが約360万円で売れるというハッピーエンドを迎えました。

どんなプロジェクト・コミュニティにも、その始まりや目指す未来があり、ファウンダーやメンバーの想いや日々の努力があるはずです。
こうした物語をしっかりとコミュニティメンバーに伝え、その物語を共に歩む仲間になってもらうことは、NFTプロジェクトに限らずあらゆるコミュニティ運営において重要なことだと言えるのではないでしょうか。

希少性

ユーザーの「動機の強さ」を高める仕掛けとしてもう一つは「希少性」が挙げられます。希少性は価値を生み、価値はモチベーションを喚起します。先ほどのウォーホルの例を再度出すと、もし作品が『32万個のスープ缶』であれば、ひとつの作品に今ほどの価値はついていなかったでしょう

先述の通り、希少性によるモチベーション喚起はゲーミフィケーションの典型例です。思い返してみれば「レアアイテム」といったキーワードに出会ったのは、テレビゲームが初めてだという人も多いのではないでしょうか。
NFTにおいてはアローリストという仕組みそのものが希少性を生み出す役割をもっているのですが、その希少性を演出するためのさらなる仕掛けも、NFTコミュニティを観察すると色々と見つけることが出来ます。

希少性とはつまり需要に対して供給が少ないことなので、これを演出するためには、需要の大きさを実感させることが効果的です。(いわゆるジェネラティブNFT*1は供給数が数千に及ぶことも多いため、供給の少なさは強調しづらいケースが多く、事例としては需要の強調が多くなります)
「予約の取れない人気店」「3年待ちの魔法のフライパン」などのフレーズは、まさにこれを意識したものだと言えます。

NFT界隈では「Giveaway」と呼ばれるTwitterを使ったキャンペーンが盛んです。ツイートのRTとイイネを条件とし、抽選で当選者を選ぶ形が一般的ですが、これは単純な認知拡大だけでなく、希少性の演出にも効果を発揮していると考えられます。

※私はこのプロジェクトについて詳しくありませんが、RT数やイイネ数を見ていると、すごく人気があって成功しそうだなという感じがしませんか? NFTのコレクターにとっては、この感覚は「なんとか自分もゲットしたい」という気持ちに変わってくるわけです。

Discordで最定番のミニゲーム『rumble』も、需要の多さと希少性を実感させる秀逸な仕掛けである故に、非常に多くのコミュニティで採用されています。

『rumble』は、時間内にチャンネル内の投稿にリアクションを返す(スタンプを押す)ことで、自動で展開されるバトルロワイヤルにエントリーできるというものです。1名を除く参加者が次々と脱落していくために希少性を感じやすいというのもありますが、rumbleは受付時間が非常に短く設定されていることが多く、時間という面でも希少性を演出しています。コミュニティ参加者はその瞬間を逃すまいとDiscordから目が離しづらくなるというわけです。

NFTにおいて「希少性」を語るのであれば、レアリティについても触れざるをえません。
パーツの組み合わせからなるジェネラティブNFTは、それぞれのパーツや素体にレアリティが設定されていることがよくあります。目からビームが出ているとレア、女性モチーフのキャラクターはレア、といった具合です。

多くのプロジェクトは、「sneak peak(=チラ見せ)」と言って、作品群の一部をセールス以前に少しずつ公開する手法をとります。これは、作品についてコミュニティ参加者に紹介することが一義的な目的ですが、レアリティについて意識させることにもつながります。
供給数自体は数千と多くても、そのうちレアな作品はわずかとなれば、誰もがその希少性について意識せざるをえなくなります。アローリストは複数所持できるケースも多いので、アローリストをひとつ取得した時点で満足させず、より多くのアローリストの取得を促すことにもなるのです。


次回noteのテーマは「過程をより楽しく」


見てきたように、コミュニティ参加者のモチベーションを向上させるにあたって、ゲーミフィケーションの手法は大いに役立ちます。
NFTプロジェクトは積極的にこれらの手法を取り入れており、NFT以外のコミュニティマネジメントにおいてもとても参考になるかと思います。

NFTを所有しなくとも、なんならウォレットさえ持っていなくても、これらのコミュニティには参加できますので、コミュニティマーケティングに取組むビジネス担当者は、ぜひ気になるプロジェクトのDiscordチャンネルに参加してみるとよいのではないでしょうか。

当noteは三部構成となっており、一つ目の記事ではコミュニティにおける目標設定と進捗感の演出について、本記事では世界観と希少性の活用について分析しました。

最後となる次回記事では、目標までの過程をより楽しくする「初心者設計」と「創造性の喚起」について、様々なNFTプロジェクトの事例と共に見ていきたいと思います。

第一回:『目標を明確にし、「進捗感」を与える』編
第二回:『目標へのモチベーションを高める「世界観」と「希少性」』編 
第三回:『目標までの過程が楽しくなる「初心者設計」と「創造性」』編 

【引用一覧】

*1 作品を様々な種類のあるパーツに分け(目・鼻・口・アクセサリーなど)、各パーツを機械的に組み合わせることでそれぞれ異なるシリーズものの作品とするNFTコレクション。



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執筆:野尻 昌仁|株式会社セガ エックスディー

コンサルティングファームでの新規事業立ち上げ・ジョイントベンチャー設立などを経て、2021年にセガ エックスディー入社。
コンサルティングスキル・事業開発スキル・ゲーミフィケーション知見を組み合わせ、様々なクライアントと新たな価値を共創している。
また、社内でweb3領域の取り組みを推進しており、自身も様々なNFTのコレクターであるだけでなく、1stセールで300ETH程調達した国内大型NFTプロジェクトの運営にも参画している。

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