【CX School】第3回 ゲーミフィケーション学習
『 CX School 』とは、セガのグループ会社、セガ エックスディーによる顧客体験( CX )設計の専門家養成プログラムです。 普段は企業の人材育成や社員教育として本プログラムを提供していますが、もっと皆さんに知ってもらう為に、プログラムの一部を Youtube の『 CX School 公式チャンネル 』で順次公開していくことにしました。
また、note上では、Youtubeで公開されている内容をテキストと画像でも順次公開していきますので、Youtube/note お好きな方で皆さまのお仕事のお役に立てたら嬉しいです。
今回は『【CX School】第3回 ゲーミフィケーション学習』と題して、Youtube動画の第3回目を、テキストと画像でお届けします。
■今回の講義内容
本日は「ゲーミフィケーション学習」についてお話しますので、CXスクール第1回・第2回の動画をご覧いただいた方も、本日が初めてだという方も、ぜひ最後まで聞いていただければと思います。
■ ゲーミフィケーションの歴史
ー ゲーミフィケーションの誕生(2010年前後):
ゲーミフィケーションの定義は「ゲーム機構及び体験デザインを駆使することで、顧客の内発的な欲求を引き出し、顧客の気持ちを動かし行動を促す手法」です。
要するに、「ゲームの楽しい・面白いという感情を使って人を動かす仕掛けを、ゲーム以外の分野に活用していこう」という概念です。ゲーミフィケーションという言葉が使われるようになったのが大体2010年前後になります。
ー 方法論時代(〜2015):
ゲーミフィケーションって面白いということで、いろいろな企業様が活用を始めました。バッチやリランキング、チュートリアル、アチーブメントなどゲームでよく使われている手法が積極的に使われました。
しかし、顧客の内発的欲求に注目せずに表面的なテクニック論に終始しており、成功事例が生まれにくい時代でした。
ー 本質時代(2015〜):
「方法論で手法だけ手に入れるのでは意味がない」と各企業様が気付きはじめました。2015年以降は、本質的にどうやって人を動かすのか、ゲームはどうやって人を夢中にさせるのか、という観点で取り組みを始めたことにより、数多くの成功事例が生まれてきています。
2015年以降の動きを私たちは本質時代と呼んでいますが、「ゲームが持つ本質的な人を動かす力に着目しサービスに実装していく」というように、ゲーミフィケーションの歴史は変遷してきています。
■ セガ エックスディーが定義しているゲーミフィケーションの領域
まず「どうやって人に行動変容を起こさせるか、人をどう動かすか」ということが、ゲーミフィケーションの大きなアプローチになります。その上で、どういう体験を作るか考えます。体験は2種類に分解できます。ひとつ目はついやってしまう「瞬間的なユーザー体験」、ふたつ目は、ついついやり続けてしまう「粘着質なユーザー体験」です。
ゲーミフィケーションが主に取り扱う領域は、「粘着質なユーザー体験」ですので、こちらについて紹介していきます。
ー ゲーミフィケーション曼荼羅(まんだら):
これは、我々で独自に解釈したゲーミフィケーションの構成要素を、マップにしたフレームワークです。世の中にあるさまざまなサービスに対し、粘着質にやり続けてしまうことについて、必要な要素の72個をマップしたものです。
各サービスへ具体的・実践的にゲーミフィケーションを取り入れられる方法としてご活用いただければと思い、我々の方で作成しております。
その上で、曼荼羅の中心にある部分、「人を動かすための本質的な8つの属性」を人間理解という観点からお話します。
■ 人の心が動く8つの属性
ー 進展性:
毎朝ラジオ体操へ行ってスタンプ溜めていくのが楽しくなるとか、偏差値だったり、勉強すれば点数が上がるというような、「目に見える数値や目標」に対して、人間はモチベーションが続いてやりたくなる属性があります。
ー 保持性:
着せ替え人形やブロックで組み立ててモノを作ったり、アバターをカスタマイズしたりするなど、自分好みにすることで愛着がわきます。「収集物や自由にカスタマイズできる物」について人間は夢中になり続けてやりたくなる属性があります。
ー 希少性:
「あと何分でタイムセールが終わってしまう」「あと何人で締め切りです」という状況に弱くて、動いてしまう経験をした方もいらっしゃると思います。人間は「限定感があると参加する衝動に駆られたり、制限されるとやりたくなる」属性です。
ー 固有性:
ゲームの領域で多く取り入れられている部分ですが、自分が主人公となってラスボスを倒しに行くとか、ストーリーに没入して自分を投影していきながらステージをクリアし自分事化していくなど、やりがいに近い考え方です。
自分事化することで、夢中になって進めてしまうという属性が人間にはあります。
ー 忌避性:
希少性に少し似た概念ですが、人間は得をするよりも損を回避する方が力学としては強く働いてしまいます。例えば食べ放題で、元を取らなきゃとお腹いっぱいになっているのに苦しいながらもたくさん食べるといった行動がまさに忌避性です。人間は得をするより損を回避したくなる、コストがもったいないと思うとやめられなくなる属性です。
ー 創造性:
こちらもゲームの領域では非常に多く取り入れている要素です。自分の能力を発揮している感覚、自分で選択したものに対して効果が分かって、自分が優れていると思えると、創造力を発揮できモチベーションが高く進められます。学生時代に文化祭をクラスメイトと一緒に作りあげ、お客さんに喜んでもらえて楽しかったという経験がある方もいらっしゃると思います。人間は、自分で選択したものに対して効果が高い想像ができると、やる気が出てくる属性があります。
ー 社会性:
人はどうしても人と人とのつながり、コミュニティの中でしか生きられない生き物です。他人からの称賛やつながっている感覚、一緒に進んでいる感覚に対して強い衝動を持つ属性があります。
ー 偶発性:
人は決まった結果だけではなく、多少のランダム性を含むもの(偶然)に対してモチベーションが上がる属性があります。例えば、学生時代に席替えの日がちょっと楽しみになる、どの席になるのかなとワクワクした経験などが挙げられます。
以上、8つの属性をお話させていただきました。心理学では、人間の属性定義を5つに分けていますが、ゲーミフィケーションという観点で考えた時は、もう少し細かく分解して8つになります。この8属性を訴求することで、夢中になる体験が作れます。
■ ケーススタディ(防災・避難訓練)
ー 現状課題:
防災・避難訓練は、有事の際にどういった対処をするかを事前に学習する非常に重要な取り組みですが、どうしても「やらされるもの」という価値観があります。今すぐやらなくていい、小難しい話を聞くだけ、などの印象を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
我々は、避難・防災訓練をやらされるものから、やりたくなるものに変化していく必要があると感じています。
ー ゲーミフィケーションを活用して課題を解決:
解決策として考えたのが、参加したくなる/続けたくなる要素を盛り込むため、ゲーミフィケーション曼陀羅を活用して防災・避難訓練自体をコンテンツ化し、多くの方に参加していただきました。主にゲーミフィケーションの曼陀羅の「創造性」を使いました。
通常の防災・避難訓練では、座学や同じルートで避難をする模擬避難が多いと思います。そこで、どうやったら避難できるだろう、どんな体験ができるだろう、と自分たちで考え試行錯誤し、仲間と一緒に正解を導き出していく、というプロセスを体験するという創造性の要素をコンテンツに取り入れました。
創造性の要素を取り入れたことで、非常に高い満足度で、また参加したいと言ってくださる方が多くいた事例です。
防災・避難訓練はあくまで1例です。
ゲーミフィケーションの8つの属性を学び、方法論として72個の機能要素のどれを使うか考えると、人を動かすサービスやプロダクトに活用できるのではないかと思います。
■ 振り返りと次回以降の講義内容について
今回は、ゲーミフィケーションの一般化と具体的な手法をご紹介しました。次回以降は、具体的にどうデザインするのか、各機能の要素をどう使うか、にも言及していければなと思っています。次回もお楽しみいただければなと思います。
ここまでご清聴いただきありがとうございました。
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講師:伊藤 真人|株式会社セガ エックスディー
株式会社セガにゲームプランナーとして入社。モバイルを中心に複数タイトルのゲームディレクターを担当。非ゲーム新規事業領域に転籍後、スマホゲーム向けマーティングプラットフォーム Noah Pass の立ち上げにディレクターとして参画。その後、事業戦略立案、事業提携、開発管理など幅広く事業に携わる。現在はゲーミフィケーション事業を展開するセガ エックスディーの取締役執行役員 COO として主に CX デザインを担当( HCD-Net 認定 人間中心設計専門家)。
<MarkeZine 連載記事>
第1回:“やりたくなる”をデザインするには?ユーザーの行動に着目したアプローチ「行動中心設計」
第2回:【ワークシート付き】8つの要素と2ステップで、ユーザーの「ついやってしまう」アイデアを作る方法
第3回:3ステップで発想!ユーザーの「ついやりたくなってしまう」を喚起するUXの作り方
第4回:「ついやり続けたくなってしまう」を創出するには?人間の8つの基本属性から効果的な動機付けを行う方法
第5回:ユーザーの“やりたくなる”を使いこなせ!企画設計から行動変容を促すまでのフレームワーク活用
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