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NFT界隈から学ぶコミュニティマネジメント「目標を明確にし、『進捗感』を与える」編

モノや情報に溢れる今の時代、マスメディアやWeb広告など一方通行のメディアに代わるマーケティング手法として、「コミュニティマーケティング」が注目を浴びています。良質なユーザーコミュニティを築くことは、既存ユーザーのエンゲージメントを向上するだけでなく、新しいユーザーを呼び込むことや、プロダクトの改善点や新たなサービスのヒントを得ることにもつながります。

コミュニティマーケティングという言葉自体は昔からよく使われていますが、SNSを通じてより密な関係構築が可能となったことで、より具体的で実効性のあるものとして近年普及しているように感じます。このことは、「コミュニティマネージャー」や同義の「ソーシャルメディアマネージャー」というワードの検索数の伸びからも示唆されているように思えます。

そんなコミュニティマーケティングの最前線をいっているのが、アート系NFTの世界であることをご存知でしょうか!

jpeg1枚が27億円の価格をつけたこともあるその投機性の高さ*1や、年平均成長率33.9%といわれる市場のポテンシャル*2から注目されることの多いNFTの世界ですが*3、この記事ではNFT界隈で活用されている様々なコミュニティマネジメントの工夫、そしてそこで活用されている様々なゲーミフィケーションの知見を学ぶことを目的としたいと思います。

なぜNFTの世界はコミュニティマーケティングの最前線なのか? 


アート系NFTの世界では、コミュニティの重要性が常に叫ばれています。
強固なコミュニティを築けたかどうかが、そのNFTプロジェクトの成否に直結するためです。成否をわける最大の要因と言っても過言ではないかもしれません。

これは、資金調達にあたるNFTの販売量にも、その後の価格の上昇や維持にも、コミュニティの大きさと熱量が重要になってくるためです。また、そもそも多くのNFTプロジェクトは新しいブランドやIPをつくることを目標にしているので、ファンコミュニティの規模こそが成功の指標でもあります。

そんなわけで、あらゆるNFTプロジェクトがコミュニティを重視しているわけですが、NFTの購入者というのはまだまだ少なく(2021年11年のピーク時でも週のアクティブウォレット数はたったの12万です!*4)、各プロジェクトは限られたイノベーター層のアテンションの奪い合いを強いられています。

そんな激しい競争環境下だからこそ、コミュニティマネジメントに多大なリソースが割かれることになり、ノウハウが日単位で磨かれ、様々な工夫・手法が発明されているのだと思います。

なお、そんなNFTコミュニティの舞台は、専らDiscordとTwitterです。特にDiscordは拡張性が高く、ゲーマー向けのSNSとして発展しただけあり、ゲーミフィケーション活用の土台がとてもよく整っています。

ですので、この記事で分析する施策の大半はDiscordが舞台であるとご認識ください。したがって、多くの施策の目的は、Discordグループのアクティブユーザー数や発言数を増やすこと、となります。

ゲーミフィケーションの最王道「目標を明確にし、進捗感を与える」


―先の見えない真っ暗な道。終点はおそらくあるが、自分がどこまで進んでいるのかはわからない。
誰しもが不安を覚えるこんな状況、これを解消することが、ゲーミフィケーションの基本です。
ベタな例えをするならば、「魔王を倒す」という明確な目標を掲げ、その進捗をわかりやすくするために地図を示すということです。
また、それだけでは進捗感が得づらくモチベーションが保てないので、「ダンジョン」「中ボス・小ボス」「レベルアップ」など目標を細分化し、プレイヤーが達成感を味わえる瞬間を増やすということです。

ゲーミフィケーションの最定番はこのメカニクスの応用であり、ゲーミフィケーションと言って真っ先に想起される「バッジ」や「ポイント」もこれを実現するための手法のひとつです。コミュニティマネジメントにおいても、この要素はぜひ取り入れたいところと言えるでしょう。 

NFTプロジェクトのコミュニティ参加者においては、目標は実は明確です。「アローリスト」と呼ばれる、NFTの先行購入権を獲得することが、多くの場合まずは目標となります。先行購入権をもっていることでNFTを確実に購入できるだけでなく、先行販売は多くの場合一般販売より少し安価になっているので、そのNFTを買いたいと思っている人にとっては、アローリストは是非とも手に入れたい権利となっています。
(NFTの販売が終了した後のことについては、別記事で考察します) 

実はこのアローリストによるマーケティングも、ゲーミフィケーションの典型的な活用事例です。希少性によるモチベーション喚起はゲームの十八番で、ガチャのSSRや期間限定アイテムなど枚挙に暇がありません。ソーシャルゲームでよくある、スタミナが有限となっており時間回復する仕様も同じ心理を突いたものと言えるでしょう。希少性の活用については別記事にて触れます。

そんなアローリストという目標に対して、多くのプロジェクトで、多種多様な方法で進捗感を与える工夫がされています。


レベルアップ

Discordでは、ユーザーにレベルを付与することが出来ます。レベルは発言の量によって上がっていくことが多く、これは発言量が重要なKPIになるDiscordコミュニティの運営において、合理的な仕組みだと言えるでしょう。

ユーザーには、レベルを一定まであげることでアローリストの抽選に参加できるようになるなどのメリットが提供されます。また、実際にコミュニティに参加してみると、レベルがあがるとそれだけでも単純に嬉しいものだったりします

 

ポイントとゲーム


コミュニティ内での優遇やアローリスト獲得につながる、独自ポイントを導入しているコミュニティも多くあります。なかにはshopでポイントを使って他プロジェクトのアローリストを購入できるケースもあります。

ポイントはコミュニティへの定期的なアクセスによって獲得できるため、ユーザーのこまめなログインを促すことが出来ます。さらに、ポイントを賭けたミニゲームをプレイし、増やしたり減らしたりすることも出来ます。

ミニゲームには大抵一発大当たりの可能性が仕込まれており、(大量のポイント獲得や、Discordの課金権をもらえるケースもあります)このことは多くのユーザーを惹きつけます。

パチンコなどのギャンブルは露骨な例ですが、「報酬のランダム性」はゲーミフィケーションにおいても重要な点で、大半のゲームでこのメカニクスは重用されています。ランダムな報酬が射幸心を生むことを「間欠効果」と言い、レバーを押すとエサが出るスキナー箱を使ったネズミの実験をご存じの方も多いのではないでしょうか。

ディーラーの引きが良すぎる…


称号 


ソーシャルゲームをプレイする人なら、「称号」がただの文字列以上の価値を持つことを、当然のものと感じるかと思います。「称号」は、ゲーム世界におけるステータスシンボルであり、現実世界における高級車・腕時計・ブランドバッグに例えてもよいでしょう。

Discordでは「ロール」という形で同じものを表現することが出来ます。ロールは、プロフィール欄に並べられるだけでなく、チャット上におけるユーザー名の文字色や、ユーザー名に添えられるアイコンに影響を及ぼします。

どちらのユーザーがより”すごい”のか、なんとなくわかると思います。

ロールは、ユーザーのコミュニティ内の活動に応じて付与されるので、より積極的に発言したり、イベントに参加する直接的な動機になります。ロールの有無によって見られるチャンネルを制限やアローリストの条件に加えることもできるので、非常に使い勝手のよい機能の一つです。


より強固なコミュニティのために必要なゲーミフィケーション

 
これまで見てきたように、コミュニティにとって明確な目標と進捗感が重要なことは疑いの余地がなく、多くのプロジェクトがこの点に取組んでいます。
とはいえ、これだけでは少し単調というか、物足りない感じがします。コミュニティをより強固にしていくには、目標に対する「動機の強さ」と「過程の楽しさ」もほしいところです。 

今後記事では、「動機の強さ」の誘因となるゲーミフィケーション要素として「世界観」と「希少性」について。「過程の楽しさ」の要素として「初心者設計」と「創造性」について考察していきたいと思います。

【引用一覧】

*1 https://www.coindeskjapan.com/122225/
*2 https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/non-fungible-token-market-report
*3 あるいは、世界第二位の取引所だったFTXの破綻などもあり、非常に高リスク、もっといえば詐欺に近いイメージを持っている方もいるかもしれません。実際に、高リスクで詐欺も多い世界であることは否定できません。しかし、その技術的・文化的ポテンシャルや、そこで育まれた様々な知見の価値も、また確かなものだと考えます。
*4 https://www.wsj.com/articles/nft-sales-are-flatlining-11651552616?reflink=desktopwebshare_permalink


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執筆:野尻 昌仁|株式会社セガ エックスディー

コンサルティングファームでの新規事業立ち上げ・ジョイントベンチャー設立などを経て、2021年にセガ エックスディー入社。
コンサルティングスキル・事業開発スキル・ゲーミフィケーション知見を組み合わせ、様々なクライアントと新たな価値を共創している。
また、社内でweb3領域の取り組みを推進しており、自身も様々なNFTのコレクターであるだけでなく、1stセールで300ETH程調達した国内大型NFTプロジェクトの運営にも参画している。

< 過去執筆記事 >
メタバースを「仮想空間」と定義してはいけない理由

ボードゲームを作りながら考えた、障がい者雇用と多様性ある社会に向けてエンタテインメントが世の中に出来ること

ゲーミフィケーションはコミュマネの銀の弾丸になるか?NFT界隈から学ぶコミュニティマネジメント
第一回:『目標を明確にし、「進捗感」を与える』編
第二回:『目標へのモチベーションを高める「世界観」と「希少性」』編
第三回:『目標までの過程が楽しくなる「初心者設計」と「創造性」』編


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