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2024年最注目ワード!「イマーシブ」を徹底解説

2024年のトレンドとして、「イマーシブ」が大きな注目を浴びています。「イマーシブ」が指すものは広範囲に及びますが、今後、広く「体験型のエンタテインメント」として浸透・拡散していくことは間違いないでしょう。このnoteでは、「イマーシブ」が何を指すのか、そしてどれくらいアツい市場なのかを網羅的に理解し、このビッグウェーブに乗っていきましょう!


■ イマーシブとは何か

現在、「イマーシブ」は没入型・体験型のエンタテインメントとして広く認知されつつあり、注目度が非常に高く、多くの媒体で2024年のトレンドとして取り上げられています。

「イマーシブ」は、コロナによる巣ごもり需要と、スマートフォンに可処分時間のほとんどが使われる現代の消費様式へのバックラッシュ(揺り戻し)として高い需要があることが背景にあると思われます。筆者自身もこうしたコンテンツの大ファンで、実際すごく楽しんでいます。

「イマーシブ」の定義について参照できるものとしては「Immersive Entertainment Industry」がありますが、2024年現在で注目されている「イマーシブ」とは少しズレがあるように見えます。
現在注目されている「イマーシブ」を理解するには、視覚的な体験を重視した”XR系”、これまで一方通行だったコンテンツの世界に飛び込める”体験系”の二つにわけて考えるのがよさそうです。

画像引用元:(左)イマーシブミュージアム (右)マーダーミステリー専門店 Rabbithole

ここからは、上記2つのカテゴリにわけて、それぞれの具体的な内容や、その有望さについて解説していきます。

ー 視覚的な没入感のある”XR系”

様々なメディアで「イマーシブ」の事例として頻繁に取り上げられるものとしては、『Immersive Museum』や『ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス』が挙げられます。

画像引用元:ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス
画像引用元:ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス


このように最新技術を用いた圧倒的な視覚体験によって、非現実的な世界に没入できるものを「XR系」のイマーシブコンテンツと定義したいと思います。
国外の事例では、ラスベガスにできた巨大なドーム型の劇場「スフィア」が大きな話題を呼びました。

16万平方フィート(約1.5万m2)のLEDスクリーンで埋め尽くされた球状の空間
画像引用元:Sphere

また、国内では以前からチームラボやライゾマティクスが大きく注目されています。彼らが提供してきた魅力的な視覚的体験はまさにイマーシブと呼ぶべきものであり、2024年2月には麻布台ヒルズに『チームラボボーダレス』が新規オープンとなり、ますます注目度が高まると思われます。ライゾマティクスも、2023年10月にオープンした虎ノ門ヒルズにある情報発信拠点「TOKYO NODE」において、開館記念企画“Syn : 身体感覚の新たな地平”をプロデュースしており、こちらも引き続き人気の施設となるでしょう*1。

画像引用元:(左)チームラボボーダレス (右)TOKYO NODE

また、今後、最新技術ではなくても視覚的に面白いものであればイマーシブコンテンツとしても人気が高まる可能性が高いと考えます。例えば、世界50カ国で実施され、日本では東京の竹芝で体験できる『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』。視覚障碍者によるアテンドで”純度100%の暗闇”を旅する、というものですが、こういったコンテンツもイマーシブの流行と共により注目を浴びそうです。
また、東急歌舞伎町タワーのカブキhallのように、施設全体で特定の世界観を再現したテーマパーク的施設も、イマーシブ文脈と好相性です(この手の施設だと、個人的には、九龍城の世界観を再現し「廃墟ゲーセン」として親しまれたゲームセンター『ウェアハウス川崎店 電脳九龍城』のクローズが未だに惜しまれます)。

画像引用元:(左)GO TOKYO ⒸTOKYU KABUKICHO TOWER (右)トリップアドバイザー


もしかすると、じきに古典的なプロジェクションマッピングや、イルミネーションイベントなんかも「イマーシブ」の名を冠するようになるかもしれません。こうなってくると、いよいよ何でもありの様相という感じですね。
また、ここであえて“XR系”とネーミングした通り、AR・VRなどのいわゆるXRコンテンツも要注目です。元々、イマーシブ関係なく注目度の高い分野ではありますが、イマーシブという新しい言葉が流行すれば、それがさらなる追い風となるでしょう。
Appleが手掛けるXRデバイス「Apple Vison Pro」は、これまでのXRデバイスとは一線を画する体験だともっぱら評判ですし、こうした新世代デバイスの登場も没入感ある体験に貢献することは間違いありません。

画像引用元:Apple

こうなってくると、今ではガートナーのハイプサイクルにおいて「幻滅期の谷」に位置づけられる、 メタバースの復権もあるかもしれません*2。実際すでに、Meta社の第4四半期決算は、200%以上利益増の超好決算となっています。

 

ー エンタメコンテンツを自ら体感する”体験系”

2023年における「イマーシブ」関連で国内最大のニュースは、刀社が手掛けるイマーシブコンテンツ特化のテーマパーク、「イマーシブフォート」の開業発表だったのではないでしょうか。刀社のCEO森岡毅氏は、徹底的なデータ活用によって確実な成功を導く「数学マーケティング」で有名であり、その森岡氏がイマーシブに巨額を張っているのですから、注目しない方がおかしいという話です。

画像引用元: IMMERSIVE FORT TOKYO


そんなイマーシブフォートの主力コンテンツは、「イマーシブシアター」と呼ばれる演劇の一形態です。そもそもイマーシブという言葉をエンタテインメントに持ち込んだのが、イマシブシアターという認識でおり、ニューヨークの『Sleep No More』などが有名です。

観客は仮面を被り、フロア5階分の会場の中を動き回りながら観劇する
画像引用元:Time Out


このように、既存のエンタテインメントを、自分自身がその作品の一部になるような形で、現実世界で体感するようなコンテンツを「体験系」のイマーシブと定義します。

「体験系」のイマーシブとしては他にも、ブラウザゲームとして人気のあった脱出ゲームを現実に持ち込んだSCRAP社の「リアル脱出ゲーム」にルーツを持つ「謎解き系コンテンツ」、自らがミステリー小説の登場人物になって推理やだまし合いを楽しむ「マーダーミステリー」、リアルなメディアや空間を使って仮想と現実の間を行き来して楽しむ「代替現実ゲーム(ARG)」などがあげられます。

さらに、書籍・アート・ボードゲーム・TRPGなどを体験型のコンテンツに発展させた各種ジャンルもありますが、ここでは特に国内でも注目度の高い前述の4つについて深掘りして解説します。

 

■ イマーシブシアター

舞台を観客席から眺める従来の演劇とは違い、観客と同一の空間で演劇が繰り広げられるのがイマーシブシアターです。まさに「第四の壁」を破壊することで没入感を生む、新しいエンタテインメントといえます。前述の通り、もっとも有名な事例としてはSleep No Moreが挙げられ、イマーシブフォートの主力コンテンツでもあります。イマーシブフォートと同じく森岡氏がマーケティングを手掛けているUSJでも、『ホテル・アルバート』シリーズを実施しており、こちらも非常に評価が高い公演となっています。

イマーシブシアターは、2019年で世界の市場規模は42億円以上といわれ、かつ成長を続けているジャンルです。

USJが舞台であった『ホテル・アルバート』の例もそうですが、従来の演劇舞台でなく、むしろ現実世界で実施することで意味が生まれるため、HOTEL SHE, の『泊まれる演劇』や、SCRAP社が手掛け東京ドームシティやひらかたパークで実施された『黄昏のまほろば遊園地』など、既存施設への集客に役立てることが出来るという点でも、注目のコンテンツです。

画像引用元:体験する物語Project


物語性の高いコンテンツであるため、今後、人気IPとのコラボも盛んに行われていくでしょう。実際に、イマーシブフォートでは『推しの子』や『東京リベンジャーズ』などとコラボ施設が発表されています*3。いわゆる2.5次元コンテンツとの融合もこれから見られるかもしれません。

 

■ 謎解き系コンテンツ

“体験系”のイマーシブコンテンツの中でも、現在一番市民権を得ているのが「リアル脱出ゲーム」をはじめとした謎解き系コンテンツです。特に最大手であるSCRAP社の人気はすごく、呪術廻戦、鬼滅の刃など人気アニメコンテ
ンツとはあらかたと言っていいほどコラボしています。

画像引用元: (左右共に)SCRAP


自治体での街歩き系謎解き、水族館などの施設を舞台とした謎解きなども日本中で常に開催されており、身近なエンタテインメントとして完全に定着しているといえるでしょう。

画像引用元: (左)SCRAP (右)川崎市水族館


また、コーヒーやスイーツと一緒に謎解きを楽しめるカフェや、持ち帰りの謎解きキットも人気です。その人気はお茶の間まで轟いています。例えばテレビでは、謎解きの大ファンを公言する佐藤健さんの冠特番が放送され、「松丸くん」こと松丸亮吾さんも謎解きタレントとして有名です。

企業主催のイベントも多く開催されています。子供から楽しめるライトなものはもちろん、”ガチ勢”をターゲットにしたキャンペーンもあり、ニチレイフーズによる「特からの謎を解くから」はもはや一介の謎解きプレイヤーでは手も足も出ないレベルで、クリア者はおそらく暗号兵*4か何かでしょう。

カラーコードや10進数を駆使しないと解けない、尋常じゃない難易度です(笑)
画像引用元: ニチレイフーズ 


謎解きイベントの市場規模は「500億円以上」という風に、よく言われています。これでも大きな市場ですが、この数値は調べた限りでは2015年に実施された謎解きカンファレンスでの数値が元になっているように思われ、それから10年弱の隆盛ぶりを見れば、二倍近い数値になっていてもおかしくないようにも思います*5。

上述の通り、謎解きコンテンツを巡ってはあらゆるコラボレーションがすでに行われており、これからも定番のエンタメコンテンツとして市場が広がっていくことでしょう。

 

■ マーダーミステリー

マーダーミステリーは、自らがミステリーの登場人物となり、他のプレイヤーと一緒に、ひとつの殺人事件をめぐる推理やだまし合いを楽しむゲームです。

画像引用元: マーダーミステリー専門店 Rabbithole

日本では、ブームだという声も聞かれますが、まだまだ知名度は高くありません。一方、中国ではマーダーミステリーの市場規模が5000億円と言われるほどの超有望市場です。最近では人気Youtuberヒカルさんによるマーダーミステリー専門企業の設立や、「マダミス」関連の商標取得も話題になりました。

マーダーミステリーは、オンラインで遊べる作品がboothなどでたくさん売られており、ゲームマーケット上の販売だけではなく、セットや衣装まで凝った商品を扱うリアル店舗も多くあります。

IPとのコラボも、謎解きと比べればまだまだ多くないですが、その数は増えています。また、マーダーミステリー発としたIPも登場しはじめており、名作『狂気山脈』はクラウドファンディングで2億円を集め、アニメ映画の作成が進められています。

VTuberなどの配信者による実況プレイ動画も多く出ており、イマーシブブームにのってこれから伸びていく有望市場といえそうです。

 

■ 代替現実ゲーム(ARG)

ARGは説明が難しいですが、現実世界と物語の世界につながりを作り出し、プレイヤーが現実世界から物語世界に干渉することで、物語を進めるという遊びです。

歴史が古いジャンルでもあって、2004年の『I love bees』では暗号を読み解いて辿り着いた先の公衆電話に、ゲームの世界からの電話がかかってくる体験が提供されていました。人を夢中にさせる力が凄まじく、大型ハリケーンが来ているにも関わらずプレイヤーが公衆電話に向かってしまい、問題になったそうです。

画像引用元:ARGNET

日本ではProject:;COLDというコンテンツが有名で、本作ではDiscordやSNSに物語の登場人物のアカウントが作られ、これらもゲームの進行に活用されました。 

海外事例で面白いものとしては、2005年に販売されたインターネット上の宝探しゲーム『パープレックスシティ』で、ゲームは2年をかけてクリアされました。

しかし、宝探しのヒントのひとつであった「写真の男性を探せ!」という問題だけ、解答が最後までわからないままとなっていた中、14年の歳月を経て日本人のサトシという男性が発見され、ネットで話題となりました。余談ですが、一時は時価総額20億ドルといわれた超有名ブロックチェーンゲーム『STEPN』を開発したFind Satoshi Labの社名はここから来ていると思われます*6。

ARGはひとつのゲームジャンルとして語ることも出来ますが、実際には謎解きコンテンツなどもARGの一つであると言うこともでき、今後ひとつのジャンルとして勃興するというよりは、他のイマーシブ体験の中でエッセンスが取り入れられていくようになるのではないでしょうか。

画像引用元:Pinterest


 

■ まとめ

いままで見てきたように、イマーシブ体験と言ってもまず”XR系”と”体験系”に大別でき、その中でも非常に多くのジャンルが存在します。

また今後バズワード的に広がることで、より広範な概念に用いられることも予想されます。多様な概念がひとつの言葉としてまとめられるとき、そこに非常に大きな影響力が生まれると考えます。

例えば「メタバース」という言葉も、有名になるにしたがって非常に多くの概念・定義を含むようになりましたが、結果的にそれが知名度に繋がりました(結果的に過剰な期待が生まれ幻滅期を呼んでしまうという一面もあるのですが )。

多様なジャンルを包含できる「イマーシブ」でも同じことが起こる可能性は十分にあり、故にこのワードの爆発的広がりも期待されるところです。

「イマーシブ」に関わられるのはエンタテインメント企業だけでなく、様々なIPや、自治体、施設などへの活用など、その余地は広く存在します。この大きな波に乗り遅れないよう、様々なコンテンツを体験してみてはいかがでしょうか。

 

■ 最後に少し宣伝です

セガ エックスディーは、シーガイアフェニックスリゾートと共に、没入感溢れるマーダーミステリー作品の『忘却のラウンジバー』を共同開発し販売開始しています。

初心者でも楽しめる設計ながら、奥深いシナリオに加え、リゾートホテル併設のバーを貸し切って実施されるので、臨場感ある体験が魅力となっています。

私もシナリオ作成や体験設計で一部関わらせてもらったのですが、自信をもっておススメできる面白い作品になっていますので、ぜひ体験してみてください。

イマーシブ ルーム「忘却のラウンジバー」

《アクティビティー詳細はこちら》

 また、セガ エックスディーではこれまで、様々なイマーシブ体験企画を多数手がけてきました。例えば、首里城AR謎解きツアー体験型防災訓練謎解き看板の設置、企業様や自治体様とのコラボも得意としています。

私個人も、実は謎解きクイズの作成が趣味で、仕事やプライベートで様々な問題を作成するなど、他のイマーシブ作品にも熱心なファンでもあります。セガ エックスディーの一員として、イマーシブ作品の魅力で、様々な企業様・自治体様の課題を解決していきたいと思っています。

ぜひ気軽にお問い合わせください。

 *1 “Syn : 身体感覚の新たな地平”の公演は2023年11月12日に終了しています

*2 著者自身はメタバースの明るい未来を確信しています。メタバースの狭小すぎる定義と過度な期待が広まってしまったために幻滅期が訪れてはいますが、メタバースの”時代”は今もじわじわと近づいてきているのです。(→note記事「メタバースを「仮想空間」と定義してはいけない理由」

*3 執筆時点ではオープン前なので正確な内容がわからないのですが、HPを見ると「脱出型」とあるので、イマーシブシアターよりもリアル脱出ゲーム寄りのコンテンツなのかもしれません。

*4 西尾維新原作の謎解き(暗号)をテーマにしたジャンプ漫画『暗号学園のいろは』の登場人物たちを指す名称

*5 謎解きイベントカンファレンス2015夏 で2015年の予測市場規模として記載された値が400億円です。業界リーダーのSCRAP社の売上推移が、TV番組『がっちりマンデー』によると2015年で約18億円から2020年には38億円となっているそうなので、市場規模自体が現在二倍以上になっているというのは、ありえない数値ではなさそうです。

*6 ビットコインの創始者の名前がサトシ・ナカモトなので、それとのダブルミーニングではないかと個人的に思っています。


執筆:野尻 昌仁|株式会社セガ エックスディー

 コンサルティング業界で新規事業開発・ジョイントベンチャーの立ち上げなどを経験。現在はセガ エックスディーでプロデューサーとして、社会課題を解決するスマートフォンアプリやカードゲームを製作。


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